解析事例

電子銃における電子の引き出しと電子ビーム解析

今回は、PIC-PLASMA 3D(プラズマ解析ソフト)または、PIC-ELECTRON 3D(電子軌道解析ソフト)で電子銃内の電子軌道解析をしてみます。

電子銃は、電子を発生させて、加速し、細くそろえて飛ばす装置です。

真空中で電子ビームを作るために使われ、電子顕微鏡、CRT、X線管、一部の加速器などで利用されます。

電子銃内の電子

図1:電子銃における電子軌道の概念図

電子の放出

一般的な電子銃では、陰極(カソード)から電子が放出されます。

電子の放出には次の3通りの方法があります。

      • 熱電子放出
        フィラメントや陰極を加熱して、電子を飛び出させる方法

      • 電界放出
        非常に強い電場で電子を引き抜く方法

      • 光電子放出
        光を当てて電子を放出させる方法

電子銃では、上記のうち熱電子放出 がよく用いられます。

電子の引き出しと加速

  1. 陰極から電子を出す
  2. 陽極方向へ引っ張る
  3. 加速させる

上記の過程を経て電子ビームが形成されます。 なお、電子が得られるエネルギーは、下記から算出できます。 電位差を V [V] とすると、電子が得る運動エネルギーはおおよそ

で表せます。

今回は、電子銃における電子の引き出し過程と電子ビーム生成をPIC-ELECTRON 3Dで可視化してみます。

電子銃解析

PIC-ELECTRON 3Dを用いて電子銃内の電子を解析してみましょう。

解析モデルは下記の通り。

解析モデル

図2:電子銃の解析モデル

上記のような電子銃の解析モデルを作成し、電子の引き出しと、電子ビームの生成過程をシミュレーションしてみます。 なお、電子銃における各部品の役割は下記の通り。

        • Mount Flange
          装置全体を真空チャンバーや外部機構に固定する部分です。位置決め、支持、接地の役割を持つことが多いです。電子銃本体を安定して取り付ける土台になります。
        • Grid Electrode
          カソード近傍で電子の引き出し量を調整する電極です。電子を出すか出さないか、どの程度流すかを制御する役目があります。いわば電子ビームの“ゲート”に近い部品です。
        • Focus Electrode
          放出された電子が広がりすぎないように、電界でビーム形状を整える部品です。電子を細くまとめたり、発散を抑えたりして、後段で扱いやすいビームにします。
        • Ceramic Spacer
          電極同士を電気的に絶縁しながら、機械的な位置関係を保つ部品です。高電圧がかかる部位では特に重要で、短絡防止と精密な電極配置の両方を担います。
        • Anode
          電子を加速して前方へ引き出す電極です。ビームに運動エネルギーを与え、下流側へ飛ばします。電子銃の加速部として中心的な役割を持ちます。

解析条件

解析条件は以下の通りです。

解析ソフト PIC-PLASMA 3D or PIC-ELECTRON 3D
解析タイプ 電子軌道解析
解析オブジェクト plasma_gun.obj
電圧 Cathode:-3000[V]  GridElectrode:2950[V] FocusElectrode:2000[V] その他:0[V]
比誘電率(誘電体) CeramicSpacer:9.5
1nsあたりの生成電子数 10000個
生成電子の速度 1.0× 104[m/s]
時間刻み幅 1.0×10-11[s]
総シミュレーション時間 2.0×10-8[s]
なお、これらの初期条件の設定はソフト内(PIC-ELECTRON 3D)で設定できるぞ。
下図に、PIC-ELECTRON 3Dにおける今回の解析条件の入力画面を示します。

図3:PIC-ELECTRON 3Dにおける解析条件の設定

解析結果

図4:電子銃における電子軌道解析

上記資料は、実際にPIC-ELECTRON 3Dで計算した実際の解析結果です。

図4は、電子銃における電子の引き出しと加速電圧による電子ビームの生成過程をシミュレーションしています。

なお、今回用いたcadモデルは簡易的に作成したものであるため、電極電圧やその他の条件設定は簡略化しています。

また、PIC-ELECTRON 3Dでは、上記の計算結果に加えて、さまざまなデータを出力することができます。

  • 電子密度
  • 電流密度ベクトル
  • 電場ベクトル
  • 速度ベクトル

※上記は一例です。 電子を用いた製品開発にPIC-ELECTRON 3Dを是非ご活用ください。

 

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