プラズマとは
よく物質は固体・液体・気体に分けられますが、気体をさらに加熱することでプラズマを生み出すことが可能です。
そのため、プラズマはよく物質の『第4の状態』と表現されます。
プラズマとは物質が電離した状態のこと。
電離とは、分子や原子が壊れて電子とイオンに分かれる現象のこと。



今回は、プラズマを利用する産業用製品であるマグネトロンスパッタ装置を解析してみます。
こターゲットの裏側に磁場を発生させる磁石を配置し、電子を磁場内に閉じ込めることで高密度のプラズマを生成します。
これにより、2極スパッタ装置に比べ、イオンがターゲットに衝突する頻度が増し、成膜速度が向上します。
なお、2極スパッタ装置の解析事例は下記をご参考ください。
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2極スパッタ装置のプラズマ解析
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マグネトロンスパッタ装置は、
- 半導体製造
- ディスプレイ製造
- 医療機器
- 電子部品製造
- 光学部品製造
上記のような様々な研究・産業分野で活用されています。
図1:マグネトロンスパッタ装置の概念図
上図は、マグネトロンスパッタ装置の概念図を示します。
マグネトロンスパッタ装置の成膜過程は下記の通り。
- 陰極から電子が放出します。
- 磁石により、ターゲット周辺に電子を捕捉します。
- ターゲット近傍のガスと捕捉電子が衝突し、プラズマが生成します。
- 生成されたプラズマ内のイオンが陰極に引き寄せられてターゲットに衝突します。
- ターゲット原子が放出され、基板に堆積し、成膜されます。
マグネトロンスパッタ装置の解析
当社が提供するPIC PLASMA3Dを用いて、マグネトロンスパッタ装置におけるプラズマをシミュレーションしてみましょう。
解析モデルは下記の通り。(FreeCADで作成)
解析モデル
上記のようなマグネトロンスパッタ用の解析モデルを作成し、陰極から放出される自由電子(プラズマ生成の起源となる粒子)の軌道解析を実施しました。
今回のマグネトロンスパッタ装置の場合、陰極から出た電子は磁場の影響を受けて陰極周辺に電子が捕捉されます。

そのため、電極のみのスパッタ装置に比べ効率の良いスパッタを実現することができます。
なお、プラズマの発生機構は下記の通りです。
図2:プラズマの生成過程




解析条件
解析条件は下記のとおりです。
解析ソフト | PIC PLASMA3D(通常版) |
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解析タイプ | 静電場・静磁場内におけるプラズマの軌道解析 |
初期の電子密度 | 1.0×1011[個/m3] |
新規生成粒子 | 電子 |
生成電子の初速度 | 70[m/s] |
生成電子の平均密度 | 1.0×1017[個/m3] |
電圧 | 陰極電圧:0[V] 陽極電圧:400[V] |
残留磁束密度 | 円柱磁石:1.2[T](上方向) リング磁石:1.2[T](下方向) |
時間刻み幅 | 1.0×10-11[s] |
総シミュレーション時間 | 1.0×10-8[s] |


解析結果
図3:陰極から放出される自由電子の解析結果
上記資料は、実際にPIC-PLASMA3D(通常版)で計算した結果を可視化したものです。
プラズマ生成の起源となる陰極から放出される自由電子の軌道をシミュレーションしています。
なお、動画内におけるdataは、電子の数密度[個/m3]を示しています。




今回用いたcadモデルは簡易的に作成したものであるため、電子数やその他の条件設定は簡略化しています。
また、PIC-PLASMA3Dでは、上記の計算結果に加えて、さまざまなデータを出力することができます。
- 静電ポテンシャル
- 磁界分布
- 電子密度
- 電流密度
- 電荷密度
※上記は一例です。
今回、解析を実施したPIC-PLASMA3Dをプラズマ製品の性能向上に是非ご活用ください。